欧州によるカーボンニュートラルへの対応、イギリスやフランスで進む核融合研究および原発新設
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一般社団法人エネルギー情報センター

フランスが先日、脱炭素戦略に伴う原発新設を発表し、話題となりました。今回は、世界が化石燃料からのエネルギー転換を模索する中で、イギリスで発表された核融合研究の結果や、欧州委員会の動向、その背景について考えていきます。
フランス、2050年までに原子炉6基を建設
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月10日、2050年までに原子炉6基の建設を発表しました。また、大統領の発表に合わせて、フランス電力公社(EDF)は同日、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の低速蒸気タービン製造事業の一部買収について同社と合意したと発表しました。
マクロン大統領は、原子力発電所向け低速蒸気タービンを製造するのGEのフランス東部の工場を訪問。2050年のカーボンニュートラル達成に向けたエネルギー政策として以下のように話し、化石燃料からの脱却に伴い、再生可能エネルギーと原子力の2本立てで低炭素電力の供給力を増やす方針を示しました。
「フランスを30年以内に化石燃料依存から脱却する世界で最初の主要国とし、気候変動対策の模範となりつつ、エネルギーと産業の独立性を強化する。」
原子炉建設では、改良型欧州加圧水型原子炉(EPR2)6基の建設に着手するほか、8基のEPR2追加新設についても検討しています。EPR2の1号機は2028年に着工し、2035年での運転開始を目指します。
GEの買収では、EDFの原発施設に導入されている低速蒸気タービンの製造事業が含まれる予定です。原子力発電は、ウラン(原子核)を核分裂させて熱エネルギーを得て水を沸かし、蒸気の力でタービンを回転させて電気を起こします。つまり、EDFは買収によって、原発建設のカギを握る技術や能力の獲得強化を図ることが可能になります。
一方、2030年までに10億ユーロをかけて小型モジュール原子炉(SMR)など革新的な原子炉の開発も促しています。SMRとは、従来の原子炉よりも小型の携帯型原子炉です。大型の原子炉よりも冷えやすくなることで安全性が高まるうえに、原子炉全体を簡単な構造にすることができ、メンテナンスもしやすくなります。その結果、コストの削減ができ、経済性も向上する可能性があるのです。建設の仕方にも特徴があり、プレハブ住宅のように、主要機器を事前に工場で製造してから現地で据え付けるため、初期投資抑制や工期短縮が可能といわれています。
また、SMRは負荷追従運転が可能であることから、再生可能エネルギーの変動性を調整する役割が期待されています。他にも、水素製造設備や海水淡水化設備に対するカーボンフリーなエネルギー源としての役割が期待されています。
イギリス、記録的な持続核融合エネルギーの放出に成功
同じくヨーロッパのイギリスでは、2月9日、欧州の核融合研究機関などからなるコンソーシアムであるユーロフュージョン(EUROfusion)が、記録的な59メガジュールの持続核融合エネルギーの放出に成功したと発表しました。これまで英国原子力公社(UKAEA)の欧州トーラス共同研究施設(JET)によって達成された核融合エネルギーの記録は1997年の21.7メガジュールでしたが、今回はその2倍以上となります。
イギリス政府は2021年10月に核融合エネルギー開発に関する戦略を策定。本戦略は、核融合エネルギーは低炭素で安全、かつ継続的で、事実上無制限のエネルギー源となる究極のクリーンな電力ソリューションになる可能性があると位置付け、2040年までに核融合発電所を建設するとしています。
日本貿易振興機構(ジェトロ)の記事によると、今回の成果についてイギリス政府およびユーロフュージョンは、「脱炭素エネルギー生産を通じて気候変動の影響に対処する圧力が高まる中、世界的なエネルギー危機に取り組むための安全で効率的な低炭素手段としての核融合開発ロードマップの大きな前進だ、と評価して」いるということです。
ここで、核融合型発電とはどのようなものなのか、簡単にご説明します。そもそも、軽い原子核同士がくっついて、より重い原子核に変わることを核融合といいます。太陽も核融合で燃えています。くっついたときにとても大きなエネルギーが出ます。例えると、地球に小さな太陽をつくって、この小さな太陽から出るエネルギーを利用して電気を起こそうというものです。
重い原子核を分裂させてエネルギーをつくる原子力発電とは反対に、核融合は軽い原子核を融合させるので、高レベル放射性廃棄物が発生しません。また、核融合を停止させるのが容易なため、暴走の危険がなく安全性が高いとされています。このように核融合型発電は、大規模発電ができ、CO2を排出することがないため、カーボンニュートラル社会の実現に向けて研究開発が進められています。
しかし、放射線の慎重な管理、放射性廃棄物の処理、事故が起きて周辺地域に多大な被害を与えるなどのリスクがあるため、原子力発電や核融合エネルギーはクリーンエネルギーなのかという議論は長年、世界各国で行われてきました。
持続可能なベースロード電源としての核融合発電や原子力発電という考え方
ではなぜ、今、核融合発電や原子力発電への流れが強まっているのでしょうか。
例えばUKAEAのCEOであるイアン・チャップマン氏は、「気候変動の影響に対処するために重要な変更を加える必要があることは明らかで、核融合は非常に多くの可能性を提供する。私たちは知識を構築し、将来の世代のために地球を保護するのに役立つ低炭素で持続可能なベースロード電源を提供するために必要な新しい技術を開発している」として、核融合技術の必要性を強調しています。
欧州連合(EU)の欧州委員会も、2月2日、一定の条件のもとで原子力と天然ガスを脱炭素に貢献すると位置づけた「タクソノミー」法案を公表しました。
EUタクソノミーとは、欧州グリーンディールを実現するために投融資に適格な「グリーンな産業・業種」を分類する枠組みです。6つの環境目標を置いた上で、ある経済活動を環境的に維持可能(サステナブル)と認定するための4要件を定めています。何が「グリーン」で、何が「環境的に持続可能」なのかを共通基準にそって適合率等の数値を開示します。
同法案が可決するかはEU内でも反発する国々もあり、どうなるか不透明な状況です。ただこのように、不安定な再生可能エネルギーを補うベースロード電源として原子力や核融合によるエネルギーが注目されているという流れがあることは事実です。
コロナからの復興としてグリーンリカバリーを掲げたヨーロッパ。化石燃料を減らし、再生可能エネルギーへシフトを強化してきました。しかし、様々な要因が重なりここ数か月、世界的にエネルギー価格が高騰しています。特にEUは影響が大きいことからこのような方向性が強まっていると考えられます。(以下の資料参照)

欧州における卸電力価格の高騰 出典:資源エネルギー庁
日本も次世代のエネルギープロジェクトへ参画
これまで見てきたようにSMRや核融合エネルギーなど次世代のエネルギー技術は世界各国で研究開発が進んでいます。欧米では民間企業にも積極的に投資が行われていますが、日本はどうなのでしょうか。
日本では、ITER(国際熱核融合実験炉)や、JT-60SA(核融合超伝導実験装置)などで研究開発が行われています。ここでITER向け世界最大級トロイダル磁場コイル初号機の完成についてご紹介します。
東芝エネルギーシステムズは、2021年6月に、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構より受託し製造している、核融合実験炉イーター(ITER)向けの世界最大級(高さ:16.5m、幅:9m、総重量:約300トン)のトロイダル磁場コイル初号機が完成したと発表しました。
ITERは、将来のエネルギー源の一つとして期待される核融合エネルギーの科学的、技術的な実現可能性を実証することを目的として、日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドの7極が参画し、フランス サン・ポール・レ・デュランスで建設が進められている熱核融合実験炉です。2025年の運転開始を目指しています。
トロイダル磁場コイルは、ITERでは18基が用いられますが、同社は、世界最大級トロイダル磁場コイル4基とコイル容器6基の製作を担当しています。(写真参照)

出典:東芝エネルギーシステムズ
他にも、関西電力は、福井県敦賀市と連携し原子力発電所で発電した電力で水素を製造する実証実験を始めていたり、日本原子力研究開発機構は発電しながら水素を製造する次世代炉の技術開発に取り組んでいます。
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執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
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