沖縄における新電力参入を活性化、4月開始予定の「卸電力メニュー」の需給調整力
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

沖縄エリアの新電力参入を活性化させる可能性のある「卸電力メニュー」について、価格妥当性などが制度設計専門会合において議論されました。沖縄電力によると、業務用電力の平均負荷率を前提とした試算において、沖縄電力の小売料金と調達コストを比較した場合、卸電力メニューが下回るとしています。
低利用率帯では常時BUよりも安価な「卸電力メニュー」
沖縄エリアの新電力参入について、近年は高圧部門を中心に、小売供給を開始する事業者が登場しています。例えば家庭向けにおいては洸陽電機が、新電力初となる沖縄電力管内での販売を2018年3月1日より開始すると発表しました。
ただ、沖縄エリアの新電力シェアは、全国平均と比較すると相当に低い状況にあります。2017年9月時点のデータでは、販売電力量に占める新電力の割合が全国では約12%であるのに対し、沖縄エリアは約1.5%程度と8倍ほどの乖離があります(図1)。

図1 沖縄地域における電力自由化の進展状況
このような沖縄エリアの電力自由化進展状況を踏まえ、沖縄電力は、2017年9月の制度設計専門会合において、「卸電力メニュー」を新設する旨の意向を表明しました。その後、本2018年1月に具体的内容が提示され、2018年4月には供給開始予定となっています(図2)。
メニュー設定の概要
- 価格設定: 基本料金を低め、従量料金を高めに設定した低DC型
- 季節別時間帯別料金、燃料費調整あり
- 契約形態: 相対取引
- 供給開始: 平成30年4月
- 電源構成: 石油機、LNG機の一部(需給調整相当)、石炭機の一部(需給調整相当)
- 対象費用: H30~H32年度想定費用(調整力相当分控除)

図2 沖縄エリアと他エリアにおける自主的取組の状況
卸電力メニューは、基本料金を比較的安く、従量料金を比較的高めに設定してあります。そのため、高利用率帯では常時バックアップが安く、低利用率帯では卸電力メニューが安くなる傾向にあります(図3)。卸電力メニューは需給調整に活用されることを想定しているため、低利用率帯で安価な設定となっています。

図3 常時BUと卸電力メニューの関係
沖縄電力によると、業務用電力(高圧)の平均負荷率を前提とした試算において、沖縄電力の小売料金(業務用電力)と調達コストを比較した場合、卸電力メニューが下回るとしています。平均単価比較では、沖縄電力の業務用電力は18.89円/kWh、調達コスト(常時BU3割+卸電力メニュー4割、託送料金)は18.44円/kWhと試算されています。
また、上記は供給力の全てを沖縄電力による卸供給で賄う前提での試算であり、FIT電源等を活用することによって、より調達コストを抑えることが可能としています。
ただ、需要構成によっては試算条件と異なる平均負荷率および常時BU利用率になることが考えられます。しかし沖縄電力によると、その場合も、需要構成の最適化を目指すことにより、調達コストの低減が可能としています。
卸電力メニューの契約電力は、接続送電サービスの4割以内が限度に設定されます。そのため、常時バックアップと合わせると、卸供給割合は、高圧以上について、接続送電サービス契約電力の7割以内、低圧については5割以内となります。

平均単価比較
「卸電力メニュー」に対する新電力の評価、「価格水準が高い」
専門会合においては、沖縄ガスニューパワーが「卸電力メニュー」の価格水準の妥当性について試算結果等を発表しています。沖縄ガスニューパワーによる試算では、需給調整卸の価格は新規参入の促進に資する水準ではないとしています。前提条件の下で試算した結果、複数の需要パターンにおいて、高圧業務用標準メニューより一定程度割安な供給(2%引き)は困難となりました。負荷率30%からは逆ザヤが発生することとなっています。

試算結果(平均単価の比較)
ただし、沖縄ガスニューパワーによると、需要想定を修正し、夜間比率を50%程度まで高めた場合には経済性が若干改善するとしています。しかし、同社が把握する限りにおいて、夜間比率が50%を超える高圧需要家は非常に少なく、「卸電力メニュー」の価格設定における需要想定が実態とかけ離れている可能性を示唆しています。
沖縄ガスニューパワーによる試算の前提条件
- 需要 :10MW(業務用標準メニューより2%値引き)
- 調達 :3MWの常時BU+4MWの需給調整卸
- インバランス :考慮せず
- 燃調見通し:燃料価格をJCC 44,900円/kL、JLC 59,100円/KL、JCOAL 11,900円/MTとして算出
また、「卸電力メニュー」に対する評価については、専門会合の事務局がヒアリングを実施しています。ヒアリングは新電力5社(沖縄地区で、高圧又は低圧の事業展開を行う事業者(予定を含む。))に対して行われており、全体として、ベース電源を保有しない事業者にとって、厳しい価格水準との意見がありました。そのため、沖縄電力に対抗可能な競争価格を提供することは難しいという意見が多い結果となりました。
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年06月29日
【第3回】再選トランプ政権の関税政策とエネルギー分野への波紋 〜素材・鉱物資源の安定確保とサプライチェーン強靭化を巡る論点〜
2025年4月、再選トランプ政権が発動した「相互関税(Reciprocal Tariff)」政策は、日本のエネルギー分野にも引き続き多方面の影響を及ぼしています。 第1回では制度発足の背景と太陽光・LNG・蓄電池への直接的影響を整理し、第2回では企業・自治体の現場対応と政府の制度支援の動向を追いました。本稿は最終回として、これまでの影響がさらに素材・鉱物資源というサプライチェーンの川上分野にどのように波及し、どのような実務課題を生んでいるのか整理します。エネルギー安全保障・経済安全保障双方の観点から、素材確保戦略がいよいよ重要局面に入りつつあります。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年06月26日
【第2回】再選トランプ政権の関税政策とエネルギー分野への波紋 〜日本企業・自治体の現場対応から読み解く実務課題と展望〜
2025年4月に本格発動されたトランプ政権の「相互関税」政策は、日本のエネルギー分野にも広範な影響をあたえています。前回の第1回では、制度の背景や構造的リスク、太陽光・LNG・蓄電池といった主要分野への影響の全体像を整理しました。 本稿ではその続編として、実際に通商環境の変化を受けた企業・自治体の現場対応に焦点をあて、最新の実務動向と政策支援の現状を整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年05月31日
【第1回】再選トランプ政権の関税政策とエネルギー分野への波紋
2025年4月、トランプ米大統領は「相互関税(Reciprocal Tariff)※1」政策を発動し、すべての輸入品に一律10%の関税を、さらに中国・日本などの貿易黒字国には最大35%の追加関税を課しました。 これは2018年の鉄鋼・アルミ関税措置を再構築するかたちで、保護主義的な政策姿勢を鮮明にしたものです。エネルギー関連機器もその対象に含まれており、日本側への影響も無視できない状況です。 とくに日本が重点を置いてきた再生可能エネルギー分野では、調達コストや供給網への影響が現れ始めています。 本稿では、こうした通商政策がもたらす構造的な変化とリスクについて、再エネを軸に読み解いていきます。 ※相互関税:米国製品に課されている関税と同水準の関税を相手国製品にも課すことで、貿易上の“公平性”や“対等性”を確保しようとする政策。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年03月17日
2025年開始の東京都による第四期間の排出権取引、非化石証書の利用可否や電力会社の排出係数反映など各種内容が変更
東京都では日本政府に先駆けて2010年から排出権取引を開始しており、2025年からは節目の第四期間となり、これまでの運用経験等から様々な変更が行われています。電力関連では、非化石証書の利用が可能となるほか、電力会社の排出係数が勘案される内容となっており、本記事では変更の大枠を見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年02月19日
2026年度から「成長志向型」カーボンプライシング開始の方針、排出権の市場取引を通じた脱炭素経営の抜本変化
日本においては2000年代から本格的に「カーボンプライシング」についての検討が進められてきましたが、2026年度からGXを基調とした新たな排出権取引が始まる方針です。これにより、脱炭素経営やビジネスが抜本的に変化する見込みとなり、本記事では現状の検討状況を整理しております。




















